(――そう言われてみれば、最近体が重い気がする)

一体何時から?
思い当たるのはあれしかなかった。


(――きっとそうだ。

――私がこんな体型になったのは、卒業旅行で羽目を外して食べまくったせいだ)

勿論、自分が悪いと分かってる。
でも何も太ったとか言わなくても。


雪那は智希の顔を思い出してみた。
屈託のない笑顔。
歯に絹を着せぬ物言い。
全てが智希の魅力だった。


(――やだ私。先輩の事まだ好きみたい)
雪那は赤面しながら新人研修に遂行した。




 「さっきはごめん」
社員食堂で智希が雪那を見つけて隣に座った。


「ここも、派遣切りの後に色々とあってね。正社員で入社出来たなんてラッキーだったね」


「大変だったんですね。私も内定取り消しにならないかと今朝までヒヤヒヤしていました」


「来たら、新入社員はいらない。なんて言われたら立ち直れないな。ま、頑張れ雪那」

智希は軽く雪那の肩にタッチして席を離れた。


雪那は一緒に食べてくれる事を期待していた。
少しがっかりしながら、智希の移動先を目で追った。


(――そうよ。やっと決まった内定が取り消しにならないかヒヤヒヤしていたの。

――そうよ。だから太ったの)

雪那は溜め息をついた。


(――違った……
そうだよね。ただ単なる食べ過ぎだっただけだよね。

――だって……
就職が決まって本当に嬉しかったんだもん)

雪那は、智希に言い訳したくなっている自分に気付いてはにかんでいた。


(――先輩、冗談だと言って。エイプリルフールだって言って)


そう……
この日は奇しくも又エイプリルフールだったのだ。