雪那と、女性だけの組み立て班の表彰式の日程が決まった。

場所は勉強会の行われた結婚式場のあるホテル。

それを知ってるリーダーと、組み立て班の仲間は、密かにサプライズを計画し実行しようとしていた。

それは雪那と智希の結婚式を同時に開催しちゃおうとするものだった。

ホテルに結婚式場があるのなら、それを利用しない手はなかった。

まず、表彰式を終えた雪那を仮面を被った先輩が拉致した。

突然の事で、雪那は恐ろしさの余り失神した。

やり過ぎたと思いながらもプロジェクトは進行した。

雪那が気を失っている内に、準備は順調に仕上がっていく。

ホテル内のチャペルでは、呼ばれた両家の親戚達が顔合わせを行っていた。

放ったらかしになっていた雪那が目覚めると、みんな一斉に拍手した。

雪那は表彰式の二次会かと勘違いした。

そこへ燕尾服姿の父が現れた。

娘の手を取りエスコートされても、雪那はチンプンカンプン。

ドアが開き、チャペルが現れる。

その時やっと、自分がウエディングドレス姿だと気付いた。

祭壇の前には、夫となるべき人。智希が待っている。

雪那はじわじわと湧いてくる幸せを噛みしめながら、父とヴァージンロードを歩いていた。



「ちょっと待った!」

突然声がかかった。
雪那はドキンとして立ち止まった。


会場にいた全員がその声の主を探している。

でも解らなかった。




「この結婚式、ちょっと待った」

それは祭壇の前から聞こえていた。


「皆さん待って下さい。俺はまだプロポーズさえしていないんだ」

そう言いながら、智希は跪いた。


「君と、ずっと一緒にいたいと思っていた。君を愛する事しか出来ないけど、傍にいてくれないか? 俺と結婚して下さい」

智希は雪那の指に口づけをした。


雪那は頬を赤らめながら頷いていた。




 雪那にはご褒美として、一週間の特別休暇が与えられる事になっていた。

これはリーダーの仕組んだ最後のサプライズ。

智希と雪那の新婚旅行の為だった。

雪那の母親はリーダーに言われて、ボストンパックの中に必需品を詰めて持って来ていた。

その中に袋に入った黒い下着をいれてくれるように頼んでいた。

もし母親にその下着が渡っているのなら、自分の思い違いだとしよう。でももし渡っていないのなら勝負下着に違いない。

リーダーはこの一点に賭けてみた。




 ウエディングドレスを脱いだ雪那に、リーダーはこっそそれを渡した。

「これはっ!?」

驚く雪那にウインクで返すリーダー。

雪那は思わず赤面した。

リーダーは雪那を優しくハグした。

「雪那ちゃん。そのままのあなたでいて。無理なダイエットは体を痛めつけるだけ。だってぽっちゃりの方が似合ってるもの」

言ってしまってから、失言したとリーダーは気付く。

でも雪那はその言葉を重く受け止めて泣いていた。

「そんなに私の事思っていたのですか? とっても幸せです。ありがとうございます!」

雪那は深く頭を下げた。
それは精一杯の、心を込めた感謝のしるしだった。

雪那は黒い勝負下着の紐パンを身に纏い、智希の運転する車に乗り込んだ。


「後のことは任せてね」
リーダーはそう言った。

後のこと……
智季に負担かからないようにすることだった。


「旦那と約束したんだ。どんなに辛くても前を向いて生きていくと」
リーダーはそっと囁いた。




 会社の保養所である静かな山のホテル。

ここが新婚一日目の宿泊場となる。

雪那は案内された部屋のベランダに立ち、幾重にも連なる山並みを眺めながら、長かった今日を思い起こしていた。

後ろに智希の気配を感じた雪那。

身動きしないで智希の優しいハグを待っていた。

智希はそっとスカートに手を忍ばせた。

紐パンが手に触れる。

「これはっ!?」

「そうあの時の黒い下着。本当は勝負下着だったの」

雪那はやっと告白した。

次の瞬間。智希はキスの洪水を雪那に浴びせた。

雪那は智希の優しく激しい愛撫を受けながら、愛する事に酔っていた。

それは待ちに待った二人だけの時間。

智希の手が雪那の紐パンを外す。

雪那は全てを智希に任せる様に、そっと目を閉じた。