「総司ってば…」



ふぅ、と溜め息をついて桜夜は拭き掃除を再開する。


「おぅわっと!!いってぇー!!」



すると、大きな声と共に桶が盛大に転がった。



「えええええーっ。嘘ぉ~」

「す、すまねぇ」



拭いた筈の廊下に水溜まりができていた。



「ほんっとにすまねぇ。今俺も拭くもん持ってくるからよ」




そう言って来た道を戻る男。

盛大なる水溜まりを作ったのは永倉だった。




「悪かったな」



永倉は桜夜と一緒に桶から零れた水を拭き取る。



「いえ、こんなとこに置いといた私もいけなかったし」



桜夜が苦笑いをする。




「けど、すっごい急いでなかったですか?どうかしたんですか?」

「おぉ、そうなんだよ!総司見なかったか?」



ま、また総司?!



「えーと…総司、どうかしたんですか?」



そうこうしているうちに水溜まりは綺麗に拭き上げられていた。




「最近稽古抜け出し過ぎてるからよ。捕獲令出たんだよ」

「捕獲?!」

「あれで強いから困っちまうよな。てな訳で、桜夜ちゃんも総司見たら捕まえといてくれよ」



そう言って永倉は走り去っていった。