「ね、総司」


桜が再び咲き始めた春先、庭で稽古をしていた沖田に桜夜が話しかける。


「どうしました?」


素振りをする手を休め、振り向く沖田。


「桜が満開になったらさ、お弁当作ってお花見行かない?」

「花見、ですか……」


このところ見る夢に自身がもう長くは居られない事が分かっていた沖田は躊躇した。


「どうしたの?」


桜夜は首を傾げる。


「いいえ。花見、いいですね。けれど、此処でもできるのでは?」


庭の桜を指す。

すると桜夜はぷぅと頬を膨らませた。


「庭の木じゃ見慣れ過ぎてて雰囲気なぁい」

「桜夜から雰囲気などと……」

「何か言った?」


桜夜の頬が更に膨れる。

それを見た沖田が楽しげに笑った。

風に吹かれて咲き始めた桜の花びらがハラリと落ちる。

花びらはクルリクルリと木の根元で渦を巻き始めた。


「そ、総司!あれ!」


まるで沖田が現れた時の再現シーンに見えて桜夜が驚きの声をあげる。