「ユキィ〜、帰るぞぉ」
俺はなるべく平静を装って由貴を迎えに勝のところへ行った。
さっき怒鳴った手前、由貴が家に帰り辛くなるのは可愛そうだと思ったからだ。
ところがそこには頬を赤く染め、男と向き合う女の顔をした由貴がいた。
よく見ると、その男はなりこそ変わったが勝の甥の雄一だった。
「あれ、雄一、来てたんだ」
「ジョー、おどろかないでよ、なんとこの二人知り合いですって!
それも付き合ってたんですってよ、信じられる?!」
興奮気味に勝が叫ぶ。
それを聞いて俺はピンときた。
「もしかして、あの気まずくなった彼女ってこいつのことか?」
「……」
やべぇ~、また余計なこと口走っちまった。
俺は失言を誤魔化そうと、由貴へ目を移した。
そっか、こいつにも色恋ざたがあったわけか。
相手が雄一だった、ってのが出来すぎる偶然だけどよ。
こりゃ、話題を変えないと拙いな、と俺は本能的に悟った。
「って、あれっ? ユキおまえ、なんだかさっきと違わないか?」
よく見れば、髪形も服装も、さっきとまるで違っている。
「色っぽいっていうか、お前って、こんなに美人だったけ?」
ここまでくると、俺の口の悪さとタイミングの悪さは天下一品だな。
「もおぅ、ジョーったらデリカシーってもんがないんだから。
ユキちゃんは元がいいの。美しさが際立ったのよ」
やっぱ勝には敵わねぇ~



