みあげればソラ


「孤独に向き合うことができなきゃ、結局また同じ事の繰り返しになる気がして……

一人でも生きていける自信が欲しかったの」

そう美亜は言った。

「ヒロ兄に拾われて、庇護されるだけの自分が嫌だった。

ちゃんと自立して、一人の人間として、共に歩いて行きたいと思ったの」

ほら見て、と美亜は言った。

「大学出て、養護教諭になって、今は立派な社会人だよ」

「頑張ったな」

「ヒロ兄も」

「あぁ、俺も頑張った。俺も晴れて弁護士になれた。これも美亜のお陰だ」

「わたしの?」

「坂田に言われたよ。美亜は俺の重荷になりたくなかったんだろうって。

実際、あの時の俺は、お前と二人で居れれば他には何にもいらないって思ってた。

あのまま居たら、結局、何処かで行き詰まってたんだろうなぁ〜

この空白は必要な時間だった。

今だからそう思える。

美亜も何処かで頑張ってるんだ、俺もやるぞってさ。

俺が自分の道を歩いていれば、美亜はきっと戻ってくるって信じてたから。

でも六年は長かったなぁ」

「生きていれば、悪いこともあれば良いこともある。

長いこと待ったお陰で、わたし、今、凄く幸せだもん」


そう言って、美亜は俺の腕の中で笑った。