「さむぅ〜、冷えてきたなぁ〜」
俺は溜まった事務仕事をやっと終え、事務所を出た。
久しぶりの深夜の街を歩く。
「おう、ジョー! じゃなねぇか、弁護士先生か。遅くまでご苦労なこったな」
顔見知りのヤスさんが声をかけてきた。
髪は金髪じゃなくなったが、もともと黒とは程遠い茶髪な俺。
仕事は変えても、見た目がそう変わったわけじゃない。
働く場所も同じだしな。
「ヤスさんも、困ったことがあったら気楽に声かけてよ」
「俺はこう見えて地道に生きてんだ、面倒はかけねぇよ」
「そりゃ、お見それしました」
俺はこれ見よがしに大きく頭をたれてヤスさんに一礼する。
なんだかんだ言っても、俺はこの街に救われてるのかもしんねぇな。
「早く帰って寝な」
至極真っ当なお言葉を頂戴して、俺は家路を急いだ。
「おっ、今夜も良い月が出てるじゃねぇか」
見上げた空には、満月にほぼ近い綺麗な月が浮かんでいた。
「ミアも見てっかなぁ〜」
坂田に何と言われようが構わねぇ。今の俺には美亜だけが心の拠り所なんだ。
「思うだけはタダだしなぁ〜」
月夜の晩は、ちょっとばかしテンションが高くなる。
引力のせいか?
はたまた、月の女神の仕業か?
なんか……、見守られてるみたいな気がするんだよな。



