「先生、やった! 合格したよ!」
孝太は晴れて第一志望の難関都立高校に合格した。
まぁ、俺が教えたんだ、合格しないわけがない。
「よくやった」
「へへっ、俺もやればできるんだな」
「俺の特訓についてこれただけでも根性あるよコウタは。
この調子で頑張れば、国立大にも入れるだろ」
正直言って、かなり本気でしごいたのだ。
って、本気にもなるだろ!
宮田家には、今のところ私立高校に進学する余裕はない。
高校に行きたいのなら、授業料のかからない公立校に入るのが絶対条件だ。
かと言って、ランクを落とした高校に入っても、その後が辛い。
大学進学も、国立大以外の選択肢は孝太にはないからだ。
貧しい母子家庭の宮田家には仕方のないこと。
だが、しっかりと努力して進学の権利さえ勝ち取れば、その先に明るい未来があるのも確かなのだ。
「あぁ〜、まだ勉強地獄は終わんないのかぁ〜」
「お袋さんに楽させてやりたいんだろ?」
「うん」
「じゃぁ、頑張るんだな」
「わかってるよぉ」
不貞腐れながらも、孝太の表情は明るい。
人間、挫折も大切だが、こうした成功体験を積み重ねて自分に自信をつけていくことができる。
孝太は今迄苦労した分、これからは幸せな体験を積み重ねていって貰いたい。



