「おっ、コウタ、今日は調子がいいじゃねぇか。全問正解だ」
「やったぁ〜」
「おいおい、どうしたんだ、先週はチンプンカンプンだったじゃねぇか」
「へへっ……、じつはさ、菅野先生にちょこっと教わった」
「菅野先生?」
「うん、保健養護の先生。放課後図書室で宿題してたら先生が来てさ。何処がわかんないの?って教えてくれた」
「へぇ〜、良い先生じゃん」
養護教諭って、こないだ孝太の母親が言ってた先生のことだな。
成る程、孝太の転校理由にも目を通してのことだろう。
慣れない環境とストレスで体調を崩したりしないよう、日頃から孝太の様子を気にかけてくれているらしい。
ありがたいことだ。
「だろ、だって菅野先生はこないだ……」
楽しそうに話していた孝太の口先が急に重くなった。
「こないだどうしたんだ」
「うん……、なんでもない。こないだも教えてくれたし。いっぱい教えて貰ってる」
こいつ、なんか隠してるな。
「その菅野先生って美人だろ」
「えっ、なんでわかるの?」
「お前が俺に何か隠そうとしてるからだ」
「えっ、そんなことないよ」
「俺にはわかるんだよ。ま、そのうちボロが出る。俺が本気になれば、お前の嘘なんてすぐ見抜ける。俺は教師である前に弁護士なんだぞ」
と、何の根拠もない理屈で孝太を丸めも込もうとしている俺がいた。
「だって……、内緒にしてって先生が……」
ほら、ガキの誘導尋問なんてチョロイもんだ。



