孝太を預かって、朝から晩までみっちりしごくという手もあるのだが。
母一人子一人で支え合って生きてきた彼らの関係性を思うとそれは憚られた。
<チロリロリン……>
おっと、孝太からメールだ。あのバカ、なんか忘れ物か?
ヒロ先生:家の前ですっごいキレイなお姉さんに、この家の子?とか聞かれたよ。オレあせってハイとか答えちゃった。コウタ
――キレイナお姉さん?!
って、ミアかっ!!
俺はソファから勢い身を起こすと、慌てて玄関先へと走りでた。
「ミアっ!」
真っ暗な道路に向けて、俺は必死に美亜の名を呼んだ。
スリッパ姿で女の名前を叫んでる俺って、相当間抜けな姿だな。
「ミアっ!」
でも、そんなのかまってられるかっ!!
「なんだヒロ、とうとう幻覚でも見えたか?」
俺の必死の呼び声に暗闇から姿を現したのは、坂田だった。
「お前、ミアを見なかったか?」
「いや。コウタなら会ったけど」
「っくしょう! じゃ、反対に行ったのかっ!」
そのまま身を翻し駅とは反対方向へスリッパ姿のまま駆け出そうとする俺の腕を、坂田が掴んだ。
なんだよ坂田、無駄に力つえぇじゃないか……



