「ま、一応、合格おめでとう」
坂田はスコッチウィスキーを一瓶下げてお祝いにやって来た。
「いちおう、は余計だろ」
「万が一落ちたら、こいつで殴ってやろうと思ってた」
物騒なことに、坂田がウィスキーの瓶を片手で持ち上げた。
「警察の言うことじゃねぇだろ」
「バーカ、俺はもう警察じゃねぇ」
「ハ? 気が早くねぇか?」
「もうあんなとこに未練はねぇ」
「って、高級官僚の言うことかっ!」
「まぁ、相応に稼がせてはもらったな」
「で、これからどうする?」
「弁護士事務所を開設する」
「本気か?」
「本気だ」
「じゃ、仕方ねぇ、やるか」
「しかたねぇ、は余計だろ」
「ミアもきっと喜ぶ」
「ハ? まだミア引きずってんのか?」
「当たり前だろ、そう簡単に忘れられる訳ねぇだろ」
「ま、いつか戻ってくんじゃねぇか」
「適当なこと言うよ」
「俺の勘だよ、勘。俺が女だったら、そうするだろうなってこと」
「なんでそうなるんだよ」
「だって、なんか、ミアちゃんと俺って似てるなって思ってたからさ」



