俺は必死で一年勉強して、一発で司法試験に合格した。
当たり前だろ、並みの頭じゃねぇって!
ま、美亜や由貴や沙希の人権を守る為に、それまでも法律の知識には最新の注意を払ってきたからな。
日々の努力の積み重ねが実を結んだってこと。
世の中の仕組みを知ることは無駄じゃない。
殊に自分が弱者に当たる時は尚更だ。
世の中の仕組みは、基本、全ての人間は生まれながらにして平等である、という前提で作られている。
実際はそうでない、としてもだ。
自分の人権を擁護する為には、世の中の仕組みを知って利用する。
そうすることが本来は一番近道なんだ。
だけど、経済的弱者、社会的弱者にはその仕組みを紐解く時間がない。
生活に追われ、不安に追われ、見も心も虐げられて追い込まれた人間にそんな余裕はない。
どんな環境に生まれようとも、人間には等しく幸福になる権利がある。
唯一無二の存在として愛しまれる権利がある。
世の中の底辺に追いやられた不幸な自分を、生きる価値のある素晴らし人間だと思わせる何か。
その何かを与えられる者になりたい。
坂田と俺の願いは同じだ。
坂田自身、早くに両親を亡くして親戚中をたらい回しにされて生きてきた。
奴も俺と同様、普通を踏み外して生きてきた人間だ。
幸い、俺達二人は頭が良く、世の中のしくみを学ぶ機会に恵まれた。
だから、その力を他の余裕のない虐げられた人達に分け与える。
それは偽善じゃなく、義務なんだ。



