「ミア、俺とずっと一緒にいてくれないか?
つ、つまりだな……、俺と結婚して欲しいってこと。
嫌か?」
「それってプロポーズ?」
「ほかに何だってんだよ」
掴まれた腕が熱を帯び、弘幸の本気をうかがわせた。
美亜はそっと、その腕に自分の手を重ねる。
「……嬉しい」
「それはイエスってこと?」
「イエスと言いたいけど、ノー」
「って、なんだよ……」
弘幸はその顔を少しだけ歪ませた。
「わたしは……、わたしの身体は汚れてる。
どんなに洗っても消えないの。
ヒロ兄のことが好き。
でも……、だから……、だから自分が許せない」
美亜は真っ直ぐ弘幸の目を見てそう言った。
「それは、ミアのせいじゃないだろ。
そんな過去の記憶なんて、俺がこれからいくらだって上書きしてやる。
もう忘れちまえよ……」
「消せない記憶もあるんだよ……」
「ミア、愛してるんだ」
「ヒロ兄……」
弘幸は美亜の手から皿を取ると、そっとテーブルの上に置いた。
「ミア、俺はもうミア無しじゃ生きていけない。
ミアが必要なんだ。
ミアじゃなきゃ駄目なんだ」
「ヒロ兄……」
弘幸はそのまま美亜を引き寄せてその胸に抱いた。
美亜は黙ってその胸に抱かれた。
今ここで、彼の求愛を拒絶する勇気は彼女には無かった。
彼を想う気持ちは、美亜だって同じだったのだ。



