一夜明けの日曜日、10時を少し過ぎた頃、袴田家の玄関のインターフォンが鳴った。
昨夜は遅くまで勉強会だったので、まだみんなぐっすり眠っていた。
<ピンポン、ピンポン、ピンポン……>
次第に間隔を狭めて鳴り響く音に、一番先に気がついたのは沙希だった。
居間のラグの上に太一と仲良く並んで眠っていた沙希は、音の発生源がインターフォンだと気付くまでに時間がかかった。
「……宅配便かな、みんな寝てるし……」
宅配便がこんなにしつこくないことくらい、美亜や弘幸ならわかったであろうが。
「しょうがないなぁ……」
寝起きの鈍い頭でゆっくりと立ち上がり、玄関下駄箱の上にある認めのシャチハタを手に、沙希は「は〜い、今開けま〜す」と声を上げながら扉を開けた。
「ママ……」
そこに立っていたのは、太一を迎えに来た母だった。
「おはよう沙希、太一を迎えにきたの。
まだみなさんお休みなの?
日曜っていっても、もう10時過ぎよ。みなさん夜更かしなのね」
少しだけ顔を強張らせ、母は休みの朝に他人の家に押しかける非常識な自分を正当化しようとする。
「みんなで勉強してたから」
「勉強?」
「仕事の後で、ヒロ兄がみんなの勉強を見てくれるんだよ」
「あの人がねぇ〜」
母が心底驚いたように呟いてみせた。
「姉ちゃん、どうしたの? あれっ? 母さん?」
沙希が居ないことに気がついた太一が、心配して声のする玄関へ顔をだした。
「太一、あんたもこんな時間まで……、早く仕度して帰りますよ。
明日からはいつも通りなんだから、早く帰って勉強しないと……」



