「さて、由紀は今夜の勉強始めるぞ。沙希も分からないところがあれば持ってこい。太一はどうする?」
カレーの皿をさげた途端、なんだか部屋の雰囲気が堅くなった。
そう、これからは袴田家の勉強タイムなのだ。
「太一くん、ゴメンね。
これからみんなお勉強するからトランプはお終い。
皆でやると勉強も楽しいよ。
太一くんもわからないところがあれば出してご覧」
わたしも中学生くらだったら見てあげられるし、と美亜が食卓のテーブルを拭きながら太一に言った。
テーブルの上に所狭しと広げられた参考書やノートの山。
由紀は一日自習したノートを弘幸に見せ、疑問点を質問している。
「じゃ次、こことこの問題やってみろ」
沙希は学校での躓きや、苦手克服の補修。
「沙希はもう一回、答えを想定しながら第三回のヒアリング問題を聞いてみて」
弘幸の指示に従って進められていく袴田家の勉強会は、スピードも熱気も学校の教室とは格段に違う。
夜の1時間で、一日の勉強の辻褄を合わせるのだ、目を瞑るのも勿体無いほど時間が惜しい。
「姉ちゃん、頑張ってんだな……」
「俺はもっと頑張ってるぞ」
ここ、間違いだ、と弘幸に指摘され、太一は思いっきり乱暴に消しゴムで答えを消した。
「くそったれ!」
「ばぁ〜か、消すのはこっちだ。
興奮するとよけいに馬鹿になるぞぉ」
「ヒロ兄っ!」
美亜に窘められて、弘幸は小さく舌を出した。



