「父さんは最近、帰って来ても夜遅くか……
帰って来ない日の方が多いと思う」
太一の言葉に沙希は絶句した。
真面目で堅気の父の事を思うと、沙希は最悪の状況を考えずには居られない。
徹夜が続くほど仕事が忙しいのか、はたまた家に帰りたくない理由でもあるのか。
「ったく、なにやってんのかね」
弘幸は呆れ顔だ。
「太一くん、心配だね」
美亜が太一の頭を優しく撫でる。
「ばぁ〜か、だからって逃げて来てんじゃねぇよ」
「逃げてないよ」
「じゃ、なんでお前だけここにいんだよ」
「だから僕なりに助けを求めにここに来たんじゃないか」
「お前なぁ〜、俺がそう都合良く、なんでもかんでも助けると思ってんのか?」
「だって……、姉ちゃんのことだって助けてくれたじゃないかっ!
父さんのことも助けてくれよ」
「沙希とお前の父さんじゃ、救済レベルが違うだろ。
だいたいお前の父さんは助けを必要としてるのか?
大人ってのはな、ギリギリまで自分の力でなんとかしたい、って思うもんなんだよ」
「大人って、面倒臭いんだね……」
太一はそれっきり静かになってしまった。



