みあげればソラ



「なんだ、太一、ついにお泊りか?」


深夜過ぎ、帰宅した弘幸が呆れ顔でそう言った。

「そうよ〜、皆でトランプやってるの」

美亜の言葉に弘幸は「俺のメシ」と、不機嫌に言い放った。

居間には由紀も出てきて、楽しそうにトランプに興じていた。

弘幸は、一人だけ除け者にされたようで気に入らなかったのだ。

「そうだよっ!

ちゃんと母さんの了解済だし、問題ないだろ!」

何を勘違いしたのか、太一が上気した顔で立ち上がった。

「そう噛みつくな。

お前にしちゃ、上出来だと思っただけだよ」

「二人共落ち着いて、もう、お腹が減ると機嫌悪いんだからぁ。

夕飯はカレーなの。

直ぐ温めるからちょっと待ってね」

トランプは一時中断されたけれど、美亜も他の皆も居間から腰を上げようとはしなかった。

美亜がバタバタと台所に立ち、弘幸の為にカレーを温め始める。

「よく母親が許したな」

カレーを頬張りながら弘幸が太一に声を掛けた。

「姉ちゃんが電話してくれた」

太一はそう一言答えると、あとはむっつり口を告ぐんでしまった。

「今日はお母様もクラス会で気分が良かったんじゃない」

「なんだ、酔ってたのか?」

「う〜ん、まあ、楽しそうではあったわね。ねぇ、沙希ちゃん」

「母も遅くなるかもしれないからって」

「親父もか?」

弘幸の抱いた疑問は、沙希にも伝わった。

「太一?」