沙希が恐る恐る電話をすると、母幸恵は、案外あっさり太一の宿泊を許可してくれた。
「いいわよ。こっちこそ、そちらに迷惑かけちゃって……
わたしもまだ遅くなりそうだし、お願いするわ」
電話口の幸恵は少しだけ酔った風で、その声は明るく上機嫌だった。
「はい、わかりました。それじゃ、失礼します」
最後美亜が代わって電話を切った。
「了解ももらえたし。さ、それじゃ順番にお風呂はいっちゃお。
太一くんは一番ね。
女は長風呂だからね〜」
美亜が太一にタオルと着替えを持たせ一番風呂に急きたてた。
「沙希ちゃんの部屋は由貴ちゃんと二段ベッドだからね。
太一くんには、ヒロ兄の部屋で寝てもらおうね」
と美亜が言った。
「えっ?」
「ヒロ兄はわたしのとこで寝れば良いし。
あ、それとも姉弟水入らずで居間にお布団敷いて一緒が良い?」
沙希は慌てて首を横に振った。



