「美亜、こちら裕さん。今日から貴方のパパよ」

母にそう言われ、「美亜です。よろしくおねがいします」そう頭を下げた。

物心ついたころから、何度目かの自己紹介。

そんな状況に慣れた美亜は、何のわだかまりもなくその男を受け入れた。


美しく恋多き母はいつも裏切られ、そしてまた新しい男をみつけた。

彼女の綺麗な横顔に涙が伝うのを、美亜はいつも不思議な思いで見つめていた。

だって、その涙の訳が理解できなかったから。

男に裏切られた悔しさなのか、愛を失った悲しさなのか、それとも……

単に自分の不幸を人事のように哀れんでいたのか……


でも、その男は違った。