寝入りばなを起こされて機嫌の悪かった弘幸だが、由貴の話を聞いて目が覚めた。


「ユキ、今なんてった?」


急にまともになった弘幸に安堵しつつも、その勢いに由貴は戸惑った。

「だから、街でミアさんのお父さんに会って……」

「あいつにぁ父親なんていねぇよ」

由貴の言葉を遮った弘幸の声は少しだけ震えていた。

「でも……」

確かに二人は知り合いで、あの男は自分を美亜の父親だと名乗ったのだ。

「そりぁ、あいつの義理の父親だ。

今すぐそこへ行く、場所を教えろ」

由貴は混乱する頭を整理する。

「えっと、ここは吉祥寺駅の北口で……」

弘幸に今いる場所を説明しながら、由貴は美亜の置かれた状況を想像した。

由貴が我が儘言って街中に引きずり出した為に遭遇した災難。

義理の父親に無理やり引きずられるように連れていかれた、美しく心優しい彼女のことを思って胸が苦しくなった。