再びピアノに向かい、ピアノを弾く。



曲は、ベートーベンのピアノソナタ月光。


ベートーヴェンが31歳のときの作品である。

弟子であり恋人でもあったイタリアの伯爵令嬢ジュリエッタに捧げられた曲だと言われる。


ジュリエッタは当時17歳でベートーベンとは14歳も年の差があったが、それ以上にベートーヴェンが悩まされたのは年齢差よりも身分の差だったらしい。



ルツェルン湖に揺らぐ月光の波、夜空に燦然と輝く月を表した曲。

対照的だなと思う。




弾きながら、先ほど見た夢が頭をよぎる。




語り継がれる歴史の裏側に眠る真実は、いつの世も深い謎とロマンと悲哀に溢れている。


 ベートーベン「ピアノソナタ月光」

月明かり、の中で他には何の灯りもつけずにベートーベンの月光を弾いている。




「来世へと
結ぶ縁(えにし)を二千年
三五の月に我は祈りき」




頭に呼び掛けるように、先ほど思い出した歌が頭の中で繰り返される。



月光の曲を今ほど心地よく弾けたことはない気がした。










※作中の短歌はё月に棲む獅子ёさんに詠んで頂きました。



※注釈
*大海人=後の天武天皇
漢=漢王子
*兄上=中大兄王子(後の天智天皇)