ポケットには妖精


お父さん
仕事からまだ帰って来ないけど
きっとカレーより、違うものが食べたいだろうな。
お茶漬けでも作ろうか。

「お金なら多少かかってもいいからね。春菜が頑張るなら、お母さんも頑張ってパート増やすからね」

母。燃えてる。
ポケットの中でクミンが笑ってる。

「頭がいいと期待されて大変だねぇ」
からかうように早紀が言うと

「あんただって他人事じゃないんだからね」
母。今度は怒る。

忙しいこった。

私は妹とお母さんのケンカめいた弾む会話を聞き、カレーを胃の中に入れてから立ち上がる。

「お母さん。隣のおばさんから、すんごい塩辛い鮭の切り身もらったよね。あれ使っていいかな?夜食にお茶漬けを……」
そこまで言うと

「食べる!」
「お母さんも!」

大きく叫んで手を上げる、母と妹。
仲良しですこと。

台所に立ち
冷蔵庫から鮭を取り出しグリルに火を点ける。
鍋に水をはり
コンブを入れて、強火にし沸騰直前でかつおぶしを入れてブクブクと沸騰したら火を止め、かつおぶしを沈むのを待つ。

ゆらゆらと
鍋の中で揺れるかつおぶしに、自分が重なる。

思わず引き込まれ
盗撮してしまった菅原君の真剣なまなざしが、頭から離れない。

菅原君は自分の道を進んでる。
自分の力で
流されずに自分の意志で進んでいる。

手を止めて
冷蔵庫の中をチェックする。

小ネギもあるし、白ゴマもある。
わさびもあるしショウガもある。

「ワタシも食べたい」
ポケットの中でクミンが騒ぐ。

「いいよ」優しく返事して、心の中で見つけたスイッチを、力いっぱい押す。


決めたよ私。

菅原君。私も頑張るよ。

自分で決めた!