「また勝手に!」

「だって暗いんだもん。悩むヒマあったらお肌の手入れしたいもん」

前向きクミン。

私を胸ポケットから外し、机の上に置く。

机の上の端っこには、ビーズの天使のストラップ。

よいしょよいしょと
私は自分くらいの大きさのストラップをズルズルと運んだ。

菅原君の直してくれたストラップ。
捨てなくてよかった。

「私、髪を切ってもらったお礼も言わないで終わっちゃった」
一気にクミンに言うと

「あんたトロいからねー」
着替えながらクミンが言う。

「有南さん、菅原君がこれを直してくれたのを、見てた言い方だったよね」

「だねー」
興味なさそうにクミンは返事をする。

「部屋に入れてる仲なんだよね」

「くされ縁って言ってたし、長いお付き合いで、もう一発ヤッてるんじゃない?」

一発……妖精の名前を返上しなさい。

有南さん
菅原君の事を楽しそうに話していた。

あぁ
私ってどうしてこう
後ろ向きで地味な暗い女の子なんだろう。
情けない。

ちょっと怖い存在だけど
友達が多くて信頼されていて
顔が良くて背が高くて
おしゃれで優しい人なら、彼女がいて当たり前でしょう。

むしろ
いない方が変でしょう。

その彼女が
とっても綺麗で優しくてお似合いで

だから何?
私には関係ない話なのに。

泣けてくることないんだから
菅原君に助けてもらってありがとう
有南さんに優しくしてくれてありがとう。

ただそれだけでいいのに
涙がでそう。

だって
私とは別世界の人だけれど



好きになってしまったから。