「拓真が悪い。自分で渡せば問題なかったのに」

有南さんの言葉に呆然とする私。

「部屋の中でさー『わかんねー!』って何回も叫びながら、頑張って直してたよ」
楽しそうな有南さんの言葉を味わう。

部屋の中で

そうか
そうだよね

彼氏と彼女だもん。

部屋の中でふたりで仲良く
直してくれたんだな。

変な所で納得して
妙に寂しくなる私。

「だからまたつけて」
有南さんは笑って、また別の話題に変えてゆく。


その後は
行った事のない
おしゃれな雑貨屋さんに連れて行ってもらい、胸ポケットの中のクミンが騒ぐのを押さえつける私。

「これいいよ」
青リンゴの香りのするヘアワックスを買ってもらった私。

お金を払おうとすると『可愛くなった記念』って受け取ってくれなかった。

「拓真もそれ持ってるよ」
何気なく言われた言葉に頬が熱くなる。

使い方を教えてもらい
有南さんは用事があるようで、その場で別れた。

小さな可愛らしいヘアワックス。
手のひらにのる
シルバーの容器のヘアワックス。

菅原君とおそろい。



有南さん。

綺麗で優しい

菅原君の彼女。