ポケットには妖精

現実に戻してくれたのは
有南さんの声だった。

「拓真!いいじゃん」
菅原君の表情がいつものクールな顔に戻り、私の前髪をシャキッといい音を出して切り、ハサミを拭いてポケットに入れた。

終わった?
終わったの?
どんなんなった?

「春菜ちゃん可愛い」
由実ちゃんが駆け寄って、鏡を渡してくれた。

恐る恐る鏡を覗くと
そこには
ショートボブの女の子が、キョトンとした顔でこっちを見ていた。

え?これが私?

片岡さんに切られたギリギリのラインで後ろは揃え、コンプレックスだった厚めの髪はスッキリと内側でそき、外側気持ち長めで軽くシャギーが入っている。
前髪は長さはあるけど重みはなくなり、ピンで留めても邪魔にならない。

昨日
雑誌に載っていた女の子に似ている。

かわいい髪形。
自分じゃないみたい。
こんなに短くしたのは初めてだけれど、とても気に入ってしまった。

「片付けろよ」

それだけ言って
菅原君はカバンを持ち、教室を出て行ってしまった。

お礼も言えなかった。

振り返ると
由実ちゃん達が駆け寄ってくる。

みんな心配してくれてたんだ。

「すごく可愛くなった」
お世辞だと思うけど、皆に言われて私はボーっとしてしまう。
現実だったのだろうか
夢の中だったような。