ポケットには妖精

菅原君のハサミが私にそっとささやく。

『大丈夫だよ』
『怖くないよ』
『心配しないで』
って、ちゃんと私にリズムよく届いている。

菅原君の指は細くて長かった。
その指が私の髪に触れて
魔法をかけている。

パラパラと床に落ちる髪。
ハサミの音が心地よい
さっきみたいな工作ハサミと違って、きちんと手入れしているのだろう。
滑りもよく全然痛くない。

菅原君の冷たい指先が
そっと私の首筋を押さえ、横を向かせたり下を向かせたり。

私はなすがまま
流れに身を任せる。

私は
自分のデジカメの中に入っている
菅原君の画像を思い出す。

とっても真剣な目をして
ウィッグにハサミを入れて練習してたっけ。

あぁ
今の菅原君の表情をレンズ越しに見たかった。

前髪に入り
クルリと私の前に現れた。

そう
この表情を撮りたかった。

菅原君は私の前髪を見つめる。

そして私は
菅原君を見つめる。