ポケットには妖精


「やめなよバカみたい」
クミンは片岡さんとその友達の間に入り、由実ちゃんの首に巻いてるビニールを外す。

「城田、あんた何邪魔してんの?あんたも昨日から調子こいて、めざわりなんですけど」
マジモードで怒ってる片岡さん。

でも
怒りモードならこっちも負けない。

「イジメる意味がわかんない。なんで由実ちゃんが髪を切らなきゃいけないの?」
クミンは膝がガクガクしている由実ちゃんを立たせて、身体を支えた。

「ただのオトシマエ」
大きな声で片岡さんが言うと

「ヤーさんか」クミンが余裕で笑う。

火に油を注いだようだ。

「これで私の気が済むのなら、安いもんでしょう」
片岡さんはいつの間にかハサミを持っていた。

いや
ちょっと怖い。凶器だ。
由実ちゃんの目から涙がこぼれた。

「オトシマエなら誰でもいいんでしょう」
クミンはそう言い
由実ちゃんを自分の身体から離し、制服のブレザーを脱いで近くの椅子にかける。

クミン……。
ちょうど胸ポケットから、全てが見える。

「私でもいいんでしょう」
そう静かに言い
新聞紙の上の椅子にドスンと座る。

教室中の注目がクミンに集まる。
有南さんが驚いて口が半分開いている。
菅原君は顔を上げ、私を見ている。

私は制服のポケットで、映画のようなシーンを、ただ黙って見守るだけだった。

クミンはビニールの風呂敷を首に巻き、朝、頑張って作ったお団子ヘアをシュルシュルとピンを外してほどきにかかる。