ポケットには妖精


授業が終わり
クミンを誘って部活に行こうと思っていたら

「由実ちゃーん。みんなでカラオケ行こう。それともケーキ?服でも見に行っちゃう?」
授業中とは別人のように
クミンは浮かれて由実ちゃんに声をかける。

もう
人の気持ちを無視ですか。部活―!!
いや、あなた
放課後先生に呼ばれてるでしょう。

思わずポケットから二度見していると

「えっ?」と、由実ちゃんが振り返ったその先に、片岡さんがiPhoneをいじっていて、何かの弾みでぶつかってカランと音をたて、そのまま片岡さんの手から滑り床に落ちてゆく。

「マジ?」
その時の片岡さんの声は、一生忘れられないくらいの、低く耳に残る驚いた声だった。

片岡さんのiPhoneは新型で、注文してから2週間待ちの品物。
自慢しまくっていた品。

うわっヤバッ!

「何やってんのよ由実!」

落雷。周り感電死。

成沢君が近寄り、そっと拾ってチェックする。

「大丈夫問題ない。多少の傷はあるけれど、普通に使える」

その一言は余計だった。
傷は許せないものなんだって。