ポケットには妖精


学校到着。

あぁ
今日が無事で終わりますように。
クミンのポケットの中で
神に祈っていると

なんと!なんとなんと!

朝から生徒玄関で
成沢君と会ってしまった。

きゃー!きゃー!
成沢君だ。今日は早いんだ。
ポケットの中で騒いでパニクってると。

クミンは『チッ』と舌打ちをした。

「お、城田。おはよ」
成沢君は爽やかに私に声をかけてきた。

テニスラケットが似合ってる。
着崩した制服が似合ってる。
ツンツンした髪が似合ってる。

テニスの王子様が、この私に「おはよ」って言った。

って
いや私じゃないんだけど。

「城田さ今日、雰囲気ちがくない?カワイイじゃん」
可愛い?
可愛いって言った?
成沢君が
私に可愛いって?

きゃー!!生きててよかった。
世界中の皆さん聞きましたか?
成沢君が私に『可愛い』って言った。

今年一年
頑張れる気がする。

山びこのように『可愛い』を脳内で繰り返し、泣けるほどの感動を覚えていると


「うん。知ってる」

成沢君の顔も見ず
クミンはそう言い、さっさと靴を履きかえて教室へ向かった。

成沢君と由実ちゃんは
私を見て
呆然としていた。