ポケットには妖精

「らっきー」
クミンは胸ポケットの私にそう言い、楽しそうに玄関を出た。

「おねーちゃんだけズルい!」
そんな声を出す早紀を無視して、気分上々のクミンだった。


「いい天気だねぇ」
私の気持ちを考えず、空は秋晴れ風は秋色。クミンはご機嫌。

いつもなら私も幸せ気分になれるのに、なぜに制服のポケットの中にいるの?

悪い夢なら早く覚めて欲しい。

「あー由実ちゃんだぁ」
クミンは由実ちゃんの姿を確認して、後ろから抱きついた。

「きゃ!」

「由実ちゃんおはよー」

一瞬身体を固くしていた由実ちゃんだったけど、私だと確認して笑顔になる。

「春菜ちゃんおはよう。ビックリしたよ」
エヘへと笑ってクミンは由実ちゃんに並ぶ。

「春菜ちゃん。今日はどうしたの?いつもと違うね。髪の毛も可愛い」
目を大きくして由実ちゃんが言うと

「そうでしょう。いつもより可愛いでしょう」
そんな返事をするクミン。
ずうずうしいわー。

「あのね春菜ちゃん」
由実ちゃんは真剣な顔で私に言う。

「あのね……私、一年生の時から、トロいせいか……けっこうみんなにいじられてるの」
え、朝からカミングアウト?
ここで?しかもそれは私じゃないのよ。

「だからね、あの……私といると、春菜ちゃんまで……」

「大丈夫だよ」
クミンはあっさり由実ちゃんのカミングアウトを受け流す。