ポケットには妖精



夜が更ける

タクシーの停まる音が外から聞こえた。

母帰宅。11時45分。
ギリギリ今日でした。

私は日記帳を閉じて大きく伸びをする。

クミンも起きていて
早紀の部屋から微かに響く音楽に合わせ、小さな身体を動かし踊っていた。

可愛いな。

お母さんが出かけてから
冷蔵庫の在庫を見て
本当はロールキャベツを作りたかったけど、時間がないから残り野菜とイカで八宝菜を作り、冷凍庫のコーンを解凍してスープを、大根と水菜でサラダと梅のドレッシングを作る。
お父さんには時間があったので、揚げ豆腐を追加。

料理は大好き。

「お母さんより美味しい」
お父さんが言うと「あたりまえじゃん」って、いつも生意気な妹も褒めてくれる。

満たされた気分になる。

「アンタさぁ」
クミンが変な踊りをやめて、堂々と私に話しかけてきた

「大学行くの?」

どうしたの?急にそんな質問。

「アンタ料理好きなんでしょう」

「好きだよ」

「じゃ、そっちの学校行けばいいのに」

行きたいけど……。

調理師には憧れてる。
でも
親や学校の先生は
ストレートに難しい大学に入って、いい企業に勤めて欲しそうだ。

『お母さんもパート頑張るから。大学頑張ろうね』
先生に色々言われて
お母さんがその気になってるので、それでもいいかなって思っていた。

「アンタって流されてるよね」

胸に響くクミンの言葉。