ポケットには妖精

よく見ると
菅原君はお客さんの髪ではなく、マネキンの髪を切っていた。

練習してるんだ。

白いシャツに
黒いお店のエプロン。
カフェの店員さんみたい。
長身だからカッコいい。

顔だけじゃなくて
そのハサミを持つ動き
真剣な表情
長い指が綺麗。

私は無意識にデジカメを取り出し、ガラス越しにシャッターを切ってしまうと

「あなた、どなた?」
品の良さそうなおばさんに肩を叩かれ

「す……すいません」
大きな声を上げ
その場を逃げるように立ち去った。

走って走って
とにかく逃げる。
胸ポケットでクミンが『酔うー』って叫んでいても、一生懸命逃げる。

いやだ

本当にこれなら盗撮部だよ。

どうして私ったら

あぁ
もう今日は本当に自己嫌悪の一日。