ポケットには妖精

近寄らないように
もう一度クミンに言おうとしていると

「城田おはよう」
爽やかな声が聞こえた。

城田おはよう?
振り返ると

え?成沢君。
私?私におはようを言ってくれた?

「うわーイマイチ。あっちの方がいいよー」
クミンの心の声を無視して
私の心は成沢君にしかない。

「お、おはよう」
しまった噛んだ。
強張った笑顔を返す私。

嬉しすぎる
日記に書かなきゃ。

「ごめん城田。俺、今日の翻訳やってない。今日って俺の出席番号じゃん。当たる自信あるから、ノート見せて」
頭を下げるので

「いいよ」
私は緊張しながらカバンの中を探す。
成沢君のお願いなら
なんでもアリです。

ノートを渡すと「俺も」「私も」と、わらわらと人が群がってきた。

あぁ成沢君。素敵。

目をハートにしていると

「いいように使われてんじゃん」
クミンがつぶやいた。

違うよ
そんなんじゃないよ。

「ワタシあんまりあの人好きじゃない」
元気なく寂しそうなクミンの声が、少しだけチクリと心に響く。