その時

大きく扉が開き
息を切らして女の子が店に入り、一直線に私に向かって歩いてきた。

「すいません。私の携帯」
早口で私に言う。
頬が真っ赤だ
携帯がないのに気付き、走って来たのだろう。

「はいどうぞ」
クミンごと私は彼女に渡すと、女の子は頭を下げて足早に去って行く

「春菜っちーまたねー」
私だけに聞こえる声で、クミンは明るくそう言った。

来なくていいからっ!
もういいから!


っても
絶対来るだろうな。


そして
女の子が店を出て
丁度30秒後

店の外から
大きな叫び声が聞こえた。

「何だ?」
私と拓真が慌てて店から出ると、女の子はスマホに向かって何やら叫んでいる。

「電話?まぎらわしいな」

いいえ
クミンに向かって叫んでいたんでしょう。

クミンがカミングアウトしたのだな。