ポケットには妖精


時計の針が9時を指し
私はお店にひとりでいる女の子を見つめる。

週に2回ほどその姿を見る。
だいたい7時半に来てオムライスを食べ、閉店時間になりお客さんが全て帰ってもしばらく席に座り込み、9時過ぎに帰る。

有名なお嬢様高校の制服で
グレた感じではなく
むしろその逆できちんとしていた。

学級代表とか生徒会のイメージで、きっと頭もいいだろう。

可愛いというより
綺麗な顔立ち。

肩で切り揃えた艶のある黒髪と、意志の強そうな目が印象的な子だった。

スマホをいじりながら
溜め息を繰り返す。

私は明日のランチデザートに用意していた、リンゴのシャーベットをガラスに器に入れ、彼女のテーブルにそっと置く。

シャーベットより冷たい目が返ってきた。

「よかったらどうぞ」
微笑むと

スマホを急に隠し「どうも」と静かに彼女は答える。

こんな時は
静かにしてあげよう。

私は音をたてないようにカウンターに戻ると

「寒かった。腹減った」
大きな声を上げ、拓真が肩をすぼめて店に入ってきた。

「しっ!」
人差し指を立て
女の子の方を目で合図すると

「ごめん」
小さくなってカウンター席に座る。

仕事終わりに待ち合わせ
拓真はここで夕食を取り、ふたりで家に帰るのが日課。