春の夜風が吹いている。

私はカウンターの中で温かいコーヒーを飲みながら
ぬくぬくと壁の時計を何度も見ている。

風が強い。
お店の扉に出している
【close】の看板がパタパタ揺れているだろう。

閉店の時間になり
そろそろ彼が来る時間。

もう春だからって
ジャケットを置いて出勤した彼。

さて
お店に入って言うのは『寒かったー』かな『腹減ったー』かな

絶対後者だろう。
想像しながら笑ってしまう。

乾いたグラスを片付けながら、店の中を見渡す。

小さなお店の真ん中で
女の子がポツリとひとり座ってる。

お店自体はそんなに広くない。

カウンター席は6つ

テーブルは4人席が2つと2人席が2つ。

シンプルで家庭的な料理を出す洋食店。

自信メニューはオムライス・ハンバーグ・ポークライスなど、本当に家庭的な味を追及し、心地よく温かい料理でおもてなしをする、そんな洋食屋を目標に頑張っている。

私、城田春菜は高校時代にインドの妖精であるクミンと出会い、自分で行動することを教えられ、拓真と付き合い、高校卒業後は専門学校を経て調理師試験に合格し、無事調理師となった。

夢いっぱいで社会に出たけど
最初に就職した場所は過酷な場所だった。

有名なカリスマシェフの店は、店を広げるだけ広げ、最低限の人数をフル活用し、サービス残業当たり前で従業員を使っていた。

学生とは違う大人の世界。