「寒くない?」

「ううん大丈夫。菅原君は?」

「平気」

もう風は秋色で肌寒いのに
私は菅原君と屋上でお弁当を広げていた。

ずーっと遠くに飛行機が見える。
あれはどこに行くのだろう。
国際線かな
インドに行くのかな

空を見上げ
インドはどんな天気だろうって、ふと思う。

クミンは無事帰れたのだろうか。
仲間と再会して喜んでいるのだろうか
喜んだ後は
またケンカしてるんじゃないだろうか

元気かな。



もう
クミンがいなくなって
一ヶ月も経つのにね。

菅原君がクシャミをひとつ。

「ごめん。私が屋上が好きとか言ったからでしょう。ごめんなさい。音楽室へ移動しようか」
バタバタとお弁当のふたを閉めていたら「大丈夫だって」と、笑って動かしていた手を握られた。

思わず
大人しくなり黙ってしまう。

「くっついてたら寒くない」
優しい声を出し
菅原君は私の肩を抱く。

「あ……誰か来たら困る」

「俺らがいるってわかってるから、絶対誰も来ない」
離れようとしても、力が強くて離れられず、私は小さくなって彼の身体に包まれる。

本当だ温かい。

幸せで目を閉じていると、そっと頬を触られた。
そこだけ電流が走ったように敏感になり熱くなる。

「ごめん」

菅原君は苦しそうにそう言った。

私は「菅原君は悪くないよ」わざと明るくそう答える。