今日はいい天気。
菅原君と自分のお弁当を作り終え
必死でおにぎりを握る早紀を横目に、私はカフェオレを優雅に飲んでいる。
「手伝ってよ」
どうやら
おにぎりを作るだけで、いっぱいいっぱいらしい。
ここで手を貸すと、ずーっと手を貸し、また元に戻ってしまう。
「だーめ」
冷たく言うと
「ケチ!」
怒って私に言いかえす。
はいはい。なんとでも言って下さい。
「早紀。早く終わらせて、お父さんのお弁当もあるんだから」
お母さんも時計を見ながら必死。
どうやら寝坊したみたい。
チラチラと私を見る
早紀とお母さんの目線が痛いので、テレビに目をやると、インドの首相がSPに囲まれ、飛行機の前に立っていた。
帰るんだ。
沢山の人達に見送られ、タラップの階段を上り
もう一度
振り返った姿がカメラにアップにされると
「あ」
早紀が米粒を手につけながら、テレビを指さす
「ほら見て。インドの首相の胸ポケットに入ってるのってさ、叔父さんがお姉ちゃんにくれたお土産と一緒だよ」
首相の胸ポケットにはクミンが入っていた。
「インドで流行ってるのかなぁ」
不思議そうに言う早紀の声が、ぼんやり遠く聴こえる
クミンは首相会談で日本に来ていた、インドの首相と一緒に帰る計画を立てていた。
船やエコノミーは嫌と言い
ゴージャスな専用ジェットで帰る計画を実行した。
クミンらしいね。
私は笑ってインドの首相が、無事飛行機に乗るのをテレビで見送る。
クミン
元気でね
ありがとう。
私
頑張るよ。