「冗談だって。いやこれマジ、相葉ちゃんサイコー」
そしてテレビに向かって爆笑。

お父さんが乾いた笑いをして、後ろにあった新聞を意味なく広げる。

何て発言するのよ。
最後の最後まで気を抜けないわ。

目線の先にある新聞記事
インドの首相がアップで写っている。
私は胸を熱くして
クミンの顔をまた見上げると

「ごち。今日の夕食は私が作ったから、あとは片付けよろしく。それから、明日の朝から拓真の分のお弁当も作るので、そんなにお弁当は作れません。だからお父さんのお弁当はお母さんが作り、早紀と早紀の彼氏の分は早紀が作るように。私は二つしか作りません。以上!」
大きく宣言をし、クミンは冷蔵庫からプリンを持ち出し階段を上がる。

「あとは自分でヤッテよね」
クミンが私に言い
私は「うん」と笑って返事をした。


時間はあっという間に過ぎて行く。

クミンはプリンもアイスもチョコも食べ、満足して自分の身体に戻り、今日は私のベッドの枕元で一緒に目を閉じる。

日付が変わる前に電気を消すと
クミンが私に話しかける。

「あのさ、春菜の料理おいしかったよ」

「ありがとう」

「ワタシがね、春菜の身体に入って、言ったコトとかヤッタコトは、春菜の心の中にあったコトをしただけなんだよ」

私の心?
クミンは静かに話を続ける。

「春菜がガマンしているコトとか、ガマンしていて言えないコトとか、それをヤッタだけだから、ぜんぶ春菜の本音なんだからね」

私の本音?

「春菜はきっと、由実ちゃんが片岡に髪を切られそうになった時、ワタシがいなくても、ワタシと同じコトをしたと思うよ」

あの時?
ううん。私が自分の身体でも、怖くて足が出なかったと思う。