明日
クミンが帰る事になった。
今日は最後の晩餐なので、私は菅原君が自分の用具の手入れをしている隣で、今夜のメニューを書き、帰りに足りない材料を買って帰る流れになっていた。
誰もいない美容室。
菅原君が真剣にハサミを磨いていると、クミンが私の胸ポケットから話しかける。
「ねぇねぇ、一回だけチェンジして」
甘えた声を出すけれど
「ダメ」
きっぱり返事をする私。
菅原君と二人きりの時は交換禁止!
これは絶対譲れない。
「ワタシ明日帰るんだよ」
怒って言うけど絶対ダメ。
返事をしないでペンを走らせてると「春菜のケチ」ってふくれっ面。
ダメなものはダメ。
さてさて買い物でも行くか。
トンカツとケーキとアイスとプリンと……また私の身体で食べるんでしょう。明日も胃薬だ。
カバンにノートを入れ
テーブルの上を片付け椅子を直していると
「もう帰るの?」って菅原君が声かける。
「うん。買い物あるから。明日のお弁当のおかずも買いたいし」
「春菜の弁当って美味そうだよな」
そうだ
昨日偶然お昼に食べてたら、菅原君が後ろを通って『美味そう』って言われたんだ。
菅原君。
いつも売店かコンビニが多いんだ。
「あの」
勇気を出して言ってみよう。