呆然と見送る私の頬を、有南さんがシャーペンで突っつく。

「片岡流、最大級の褒め言葉」

「……わかりずらい」

「たしかに」

有南さんと顔を合わせて笑ってしまう。

菅原君に似た形の良い澄んだ瞳が優しくなり、私にゆっくり問いかける。

「拓真は変わった。前より笑うようになったし、明るくなった。強がってるヤツだけど、両親とも忙しくてさ、あまりかまってもらえないヤツだったから、あれでも寂しがり屋なんだ。ひねくれてるし……あ、それは血筋かな私もだけど」
有南さんの笑顔も魅力的だ。

「城田の事本気みたい。手の早いアイツがすごい慎重になってる。城田の事を大切にしてる。これからも頼むね」
昔から仲の良い、いとこ同士と聞いていた。

有南さんから言われて
私はしっかりうなずいた。

時間が経つにつれて
好きの気持ちが加速する。

これもそれも
クミンのおかげかもしれない。

今日もポケットから飛び出し
残り少ない日本を満喫するクミン。

笑って見送りできるかな。

ふっとそんな寂しさを感じてしまった。