「どこまでいった?」
無表情でカリカリとシャーペンを動かし、片岡さんが言う。

どこまで?
「えっとですね、36ページの……」
章の区切りまでは予習していたはず。教科書を手に取ろうとすると、有南さんがプッと吹き出した。

何か?
何か変な事言った?
急に不安になり小動物のようにビクビクしてると

「あんたと拓真の話。けっこう前から付き合ってんだって?どこまでいってんのかなーって思っただけ。拓真ってあんな顔して手が早いらしいから」

その意味を知りカーッと赤くなる。
手が早いって
重なるだけで私が引っ込めてんのに。

「城田に聞いてもダメじゃん。あっちに聞かなきゃ」
有南さんは顔を上げ
ツヤツヤした長い髪をサラッとかき上げ、菅原君の方を見て

「拓真。真面目な城田に手を出せた?」
大きな声で言うと
菅原君は周りに冷やかされながら「内緒」と、こっちに向かって言い、また自分の友達と話を続ける。

クールというか慣れてるのか
ただうろたえて赤くなる私とは、全然違うって感心してしまった。

「けっこうさぁ、アンタたち似合ってるよ」
片岡さんはボソッと言い
教科書を持ってまた自分の席に戻ってしまった。