それから

「うわ、マジ緊張した」
一気に力が抜けた菅原君は、照れたように苦笑い。

「菅原君でも緊張するの?」
身体中が熱くなり
いまだにもっと緊張している私が誤魔化すように聞いてみる。

「あたりまえじゃん。初めて告った」
そんな事を言われてしまった。

初めての告白がこんな私。
うわぁ
ごめんなさい。
本気で申し訳ない。

恥ずかしい雰囲気だけど
菅原君の怖い顔が解け、優しく私を見てくれて、私もちょっと力を抜く。
そしてうつむいた拍子に、ゴロンとしたポケットに入れてきた二つのおにぎりを思い出す。

「お昼食べてないでしょう」
明るくポケットからおにぎりを登場させると、菅原君は驚いて「いきなりおにぎり?」って笑う。

笑顔がまぶしい。

ピアノの前で
ひとつの長椅子に座って
ふたりでおにぎりを食べる。

ぶっきらぼうで
いつも男子の中心にいて
人気者だけど怖い存在の菅原君。

でも本当は
優しくて繊細で
きっと照れ屋さん。

「うまっ」

「本当?」

「何これ?チーズ?」

「うん。おかかとチーズ入れた」

あんなに怖くて
話もできなかったけど
その優しさに触れて
その真面目さに惹かれて
大好きな人になり
大好きな人が彼になる。

彼と過ごす時間は
満ち足りていて優しくて温かくて幸せで

大好きって
すごいパワーだなって思った。