私の耳
変になった?

ありえないセリフが聞こえたよ
妄想か
得意の妄想だね。

菅原君とお付き合いなんて
想像するのも
めっそうもない。恐れ多いわ。

でも
目の前の菅原君の顔は真剣そのもので

「俺の事……嫌い?」
ゆっくりと低い声が音楽室に響く。

ただ驚いていると

「まだ成沢の事が好きか?」

と、もっと驚く発言をするので「違う。好きじゃない」って慌ててブンブン首を横に振ると

「よかった」
そう言って表情を和らげる。

今の顔つきはヤバい
かなりカッコいい。
両肩に当たる大きな菅原君の手に目をやると、菅原君はためらいながら手を下ろし、私の顔を見てゆっくりと話を始める。

誰もいない音楽室

菅原君とふたりきり。

「お礼が言いたいのは、こっち」

「どうして?」
かすれた声で聞き返す私。

長いまつ毛
澄んだ瞳
通った鼻筋
形のよい唇。

憧れの人が
私だけに話をしてくれる。