ポケットには妖精


あぁ
ほら……そのピアノの音でわかるよ

いつも無愛想で
笑顔を見せない人だけど

菅原君はとっても優しい。

余韻の残る音が心地よい。

うっとりと目を閉じ聴いていると、音が乱れて止まってしまった。

目を開けると
私を見て軽く驚きの表情。

「あ……ごめんなさい。あの……菅原君、ピアノも弾けるんだね」
尊敬の目で見ると
菅原君は反対方向を向いて「昔、少し」と、低く言う。

「すごく上手だったよ。ビックリした」
そっと音楽室に入り
ピアノの傍に寄ると、菅原君は自分が座っているピアノ用の長い椅子を軽く叩く。

隣に座れって事?

緊張で直立不動している私の顔をやっと見て、首をクイッと動かす。

やっぱり
座れって事か。

ロボットのようにギクシャクしながら隣に腰を下ろし、菅原君の腕と私の腕が触れる。

密着している左側が熱い。

「話って何?」

黙り込む私に焦れたように聞く。

そうだよ
私が呼びだしたんだよ。

菅原君を呼び出すとは
考えるとおっそろしい。

早く話をして終わらせないと、こっちの緊張がMAXになって心臓が口から飛びでそう。
それでなくても
クラスの皆は、私が髪を切られて怒っていて、それの文句を言うもんだと思ってるから。

菅原君も

そう思ってたりして。

早く終わらそう。

一抹の不安を払拭するように、私はゆっくりとピアノの鍵盤を見ながら話し出す。