ポケットには妖精

「急に男子が告白しまくってる」
「後ろの席から順々に、好きな女子の名前を言ってる」

身振り手振りで伝えてくれるけど、まだクラスの皆はポカンとしてしまう。

「どーゆーこと?」
教えてくれた女子と仲良しの子が立ち上がり、ふたりに詰め寄ると

「わかんないんだって!でも、男子が次から次へと、好きな女子の名前を言ってる。自分でセーブできないみたい。逃げる事もできないって、身体が動かないんだって」

「太田君なんて、晴香と付き合ってんのに『本当に好きなのは桜井さんです』とか言って、もうパニック!」

すると
また隣のクラスから叫び声が広がる。

これは……この騒ぎはきっとクミンだな。
間違いない。
クミンがやらかしてる!

サーッと背中に冷水をかけられた気分。
どうしようって
どうにもならないのだけれど。

あぁ修羅場でしょう。
うちの妖精のせいです
ごめんなさい。

「相川君は?相川君は誰って言ったの?」

「相川君はこれから。すごい顔してるよ。真っ青な顔で逃げ出したいけど逃げれなくて、いいから早く来てよ!」

そんな会話を聞きながら
これまた避難訓練のように、見事な素早さで周りが動き

あっという間に

クラスの中は
私だけになってしまった。


由実ちゃん達まで
行ってしまった。

ひとりポツリ
私はマイボトルの水筒からお茶を一口飲み
今日は偶然におかずとおにぎりの組み合わせだったので、ポケットにおにぎりを2つ入れ

音楽室へと動き出す。