ポケットには妖精


家に帰ると
妹の早紀が電話を片手にピザのチラシを見ていた。

「おかえりー。お姉ちゃんは何食べるぅ?」
ピンク色したネイルで、チラシをヒラヒラと私の目の前に踊らせる。

「お母さんは?」

「いるけど、ドンヨリしてるよ。何かあったの?ご飯がないと困るんですけどぉ!……みたいな」

そっとお母さんを覗くと
ソファの上でグッタリしていた。
可愛いチュニックが泣いている。

あぁ
もしかしたら
三者面談のせい?

「早紀、オムライス食べたくない?デミクラスソースがかかっていて、卵がふんわりしていて、上に生クリームがひとすじタラリとかかってるやつ」
そっと聞くと

「食べる食べる!夜中のテレビでやってたよね。『黄金のエジプト時代やー』って彦摩呂が言ってた」
興奮して返事してくれた。

やっぱり彦摩呂か。

着替えてクミンをポケットに入れ
台所に立って
オムライスの準備。

「お母さんも食べるよね」
さりげなく聞き
返事も聞かずに作り始めると

「お母さんね、キャビンアテンダントになりたかったの」

疲れ切った小さな声が耳に届く。

「でもね、早紀みたいにおマヌケちゃんだったから無理だった。もう少し賢かったらよかったのにって、残念だった。自分が勉強してなかったから悪かったんだけどさ。だから春菜が賢いから……何にでも可能性があるから……嬉しくて勝手に舞い上がっちゃった」

おマヌケちゃんと言われた早紀は、録画していたバラエティをみて大笑いしている。

幸せそうだけど。