母親同士が姉妹で
ふたり揃って
同じお店で働く美容師だったせいなのか

昔から
私と拓真はずっと一緒に育った。

お母さん達が働いている間
お祖母ちゃんの家で留守番をし、本当の兄妹のように育ってきた。

うちの母親は仕事と家の両立ができず、美容師の道は途中で挫折したけれど、拓真のお母さんはそこのチェーン店の御曹司と結婚したせいなのか、仕事にのめり込み、拓真のお父さんである旦那様と一緒に美容界を背負う存在になり、今は夫婦で大忙しの大繁盛。ハサミを持つよりマネジメントが忙しいらしいけど。

寂しいお子ちゃま時代を送った拓真は、表情をあまり見せないクールな子に育ってしまったけど、実はとっても優しい奴なのを、私が一番知っている。

「何を見てんのよ」
近寄って
窓から外を見ようとすると
なぜか、必死で拒む。

なんで?

何があるの?
余計に興味が出てくるじゃん。

「見せてよ」
長身の拓真を無理やり避けて、窓の下を覗く私。

拓真にこんな態度をとるのは
私だけだろう。

だから余計に
『ふたりは付き合ってる』とか、たまに言われるけれど、私達は否定も肯定もしない。

だって面倒でしょう。