「あの……」
しっかりせねば
しっかりお礼を……。

「今日の空の感じいいかも」

「え?」

菅原君は生徒玄関から足を出し、私に軽く手招きをする。

私はバタバタと自分の靴箱から靴を出し、履き替えて菅原君の隣に立つ。

「ほら」って
菅原君はまぶしい顔をして、顔を上げて天を指差すと

そこには
秋の青い空が広がり

ひとすじの
ひこうき雲が流れている。

「うわぁ」
小走りで飛び出し
広い校庭で確認。

なんて綺麗なんだろう。

まっすぐに
細く長く流れる
ひこうき雲。

「カメラ。カメラ持ってこなきゃ!」
久し振りの景色に興奮し
クルリと振り返ると


菅原君は

もう

そこにはいなかった。

「マジトロい」
クミンに言われ
喪失感と疲労感が一気に襲ってきた。

その通り
ひこうき雲に夢中になって
大切な事を逃してしまった。

反論できない。