ポケットには妖精


靴を履いて帰ろうとしていた瞬間の彼を捕えるように、私は「菅原君」と、大きな声を出し彼の名を呼ぶ。

声を出して
菅原君を呼び止める。

自分の行動が信じられない。
いつもオドオドして
人の目を気にして
小さくなってる地味な私なのに。

怖くて近くにも寄れなかった、菅原君を呼び止めるとは。

胸ポケットにインドの妖精が忍び込んでから、全てが変わる。

菅原君の目の前に立ち
切らしていた息を落ち着ける。

ゴクリと生唾を飲み込み
心も落ち着かせ
背の高い菅原君を見上げる。

カッコいい……じゃなくて
違う!
綺麗な顔に負けてどうする。

「昨日は、ありがとうございました」

突然の私のお礼に
菅原君は難しい顔をした。

「あ、髪を、髪を切ってもらったお礼です」

そう付足すと「あぁ」って小さくうなずいてくれた。

「とても軽くなって、可愛くて……いや!私が可愛いんじゃなくて、髪形が可愛いんです」

うわダメだ。緊張する。
胸ポケットの中でクミンが爆笑していた。

「あの……それと」

「お団子ヘアができなくなったけど」
優しい低い声。

「いえ、それはいいんです」

「あれ可愛かったから」

カワイイ……ダメ。倒れそう私。